陽もすっかり暮れ、いよいよ「SWEET LOVE SHOWER 2014」の初日最後のアクトを務めるandymoriが登場。2013年9月24日の東京・日本武道館公演をもって解散する予定だったが、小山田壮平(Vo, G)の療養のため解散の日を延期していた彼ら。小山田の復活を機に、今夏イベント出演や単独ライブを行いファンに"別れの挨拶"をしてきた彼らは、ラストライブの場として「SWEET LOVE SHOWER」を選んだ。
サウンドチェックのためにメンバーが現れると、どよめきにも似た歓声があちこちから上がる。観客は3人の一挙一動を見つめ、チェックのために奏でられた「ハッピーエンド」「ボディランゲージ」にじっくりと耳を傾けた。
19:20を迎え、スクリーンにファイナルアクトとして「andymori」の名前が浮かぶと、びっしりと人で埋め尽くされたフィールドに歓声が沸く。待ち焦がれたファンのために1曲目として届けられたのは「グロリアス軽トラ」。歌詞の一部を「山中湖」に変える遊び心も混ぜ込みつつパフォーマンスされた同曲のあと、一瞬の沈黙が訪れメランコリックな「投げKISSをあげるよ」が披露された。メンバーは穏やかな表情をたたえ、時々お互いにアイコンタクトを取りながら1曲1曲を丁寧に奏でていく。「Peace」で一旦ギアをトップに入れた3人だったが、「1984」で再び柔らかな空気を作り出す。鮮やかなライトを浴びながら小山田は歌詞を噛み締めるように歌い、その声をシンプルで力強いアンサンブルと観客の温かなハンドクラップが支える。
小山田は「ありがとうandymoriです。今、たくさんの人に感謝してます」と述べると「andymoriは檀上尚居さんっていう人に感謝してます。ドラマーの後藤大樹に感謝してます。みんな大好きだよ」と自分たちを支えてきた人たちへの思いを明かす。そして「路上のフォークシンガー」の肩の力が抜けたセッションを経て、「革命」からボルテージの高いナンバーを2連発で投下する。小山田がまくしたてるように歌い、それに追いつけ追い越せと藤原寛(B)と岡山健二(Dr)がリズムを刻んだ「everything is my guitar」、3人のラフなセッションで魅せる「MONEY MONEY MONEY」。彼らは涼しくなった湖畔の気温を上昇させ、ひたすらグッドメロディを聴かせる「Life Is Party」では、小山田と藤原が向かい合いながらプレイ。スクリーンに映し出されるその後ろ姿は、頼もしく、同時にほのかに寂しさを漂わせていた。
本編も終盤というとき、小山田は暗くなったステージでギターを爪弾きながら「16」を情感たっぷりに歌い上げる。曲が終わると静寂が訪れ、一瞬の間を置いて軽やかなギターのカッティングが響きだす。そして始まったのは「空は藍色」だった。力強く優しいバンドサウンドが空高く広がり、深い余韻が残る中、小山田の「ありがとう」という言葉をもってライブ本編は終わりを告げた。
アンコールに応えて再登場した3人は、別れの挨拶代わりとでも言うかのように「おいでよ」を皮切りに、「FOLLOW ME」「すごい速さ」などを性急に畳み掛けていく。激しく音をぶつけ合う3人だが、アンサンブルのバランスは崩れることなく、その音がメンバーの絆の深さを証明しているようだった。そして小山田がハンドマイクで歌い出した「愛してやまない音楽を」では、3人の美しいハーモニーが高らかに響き、観客を巻き込みながら美しく感動的な空間を描き出した。
しかし時間はあっという間に過ぎ、ライブはクライマックスへ。終わりの訪れを誰もが感じたとき、小山田が両脇を見やり、唐突に「寛、健二、もう1回ライブやろう!」と言い放つ。続けて藤原がはにかみながら「やろう」と返すと、まさかの展開に観客も驚喜の声をあげた。さらに小山田は「今日はいい夜でした」と笑うと、今日のために作ったという「それでも夜は星を連れて」をプレゼントした。そして3人がアンコールの最後に鳴らしたのは、デビュー作「アンディとロックとベンガルトラとウィスキー」の最後に収録されている「ベンガルトラとウィスキー」。3人は、1時間強で全19曲を届ける過剰とも言えるサービス精神を発揮し、さらにはまさかの解散延期という彼ららしいサプライズで「SWEET LOVE SHOWER 2014」の初日を締めくくった。